地域フカボリ再発見!
わが地域のタカラモノ 日東醸造株式会社
「足助仕込み 三河しろたまり」

私がはじめて「しろたまり」を味わったのが8年前。「美味しい!卵にあうかも。」

当時、NACS※中部支部食生活研究会で、おいしい卵かけごはんを食べたいというところから、卵と醤油をテーマに情報収集し、

調査しておりました。(※NACS:公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会)

 

皆様もご存知のように、全国にはいろいろな「ご当地のしょうゆ」があります。

JAS規格では、しょうゆは、「濃口・淡口・溜・再仕込・白」と5種類分類されてます。

 

地元の愛知県碧南発祥といわれる貴重な「白しょうゆ」は是非調査したい!と、食生活研究会で願い、

碧南地域の3社の白しょうゆ醸造メーカー様を訪ねました。

そのうちの1社。日東醸造株式会社様にて、2013年に工場見学。そして、2014年には「しろたまり」を手作りしました。

日東醸造株式会社HP  こちら

 

お忙しいのにも関わらず、日東醸造株式会社 代表取締役社長 蜷川洋一(ニナガワ ヨウイチ)様より、懇切丁寧に、ご案内と

ご指導いただきました。本当にありがとうございました。

蜷川社長の第一印象は、流暢な語り口調でダンディな紳士。で、ございます!

 

さて、白しょうゆ?しろたまり?だけど、おなじ「白いしょうゆ」なのかしら?と疑問ですよね。

ダンディな蜷川社長に、その「白いしょうゆ」の話をお伺いしたいと思います。

 

Q:こんにちは、蜷川社長。 簡単に 白しょうゆのご説明を

愛知県と、岐阜県南部、三重県東部地域は、古くは醤油といえばたまり、溜醤油文化圏でした。

(現在では濃口醤油が主流で、たまりはお刺身用など限定的になりましたが)

たまりは豆味噌の桶に溜まった醤油が原点ですから、豆味噌地域イコール溜醤油文化圏のはずです。
で、この地域はそのまま白醬油文化圏でもあるのです。
なぜか、それは、たまりと白、この両極の醤油は使い分け上のセットだから。
たまりは美味しい醤油です。でも色は真っ黒!だから色をつけたくない料理には使えない。
色のつかない醤油があったら・・・

そんな状況の中、小麦で仕込んだ金山寺味噌の桶に溜まった上澄みが、色がうすいのに美味しい風味があって、

こいつは使えるとなり白醤油が誕生しました。これは業界の通説になっていて、

明治時代の初めごろに内藤さんという方が碧南ではじめて白醤油作りを始めたと言われています。

以来、主に板前さん用の醤油として白醤油はつくられてきました。

板前さんが料理によってたまりと白を使い分けるようになったのです。
ということで、たまりと白はセット、似た者どうしじゃなくて、正反対どうしのセットです。

 

Q:「白しょうゆ」と「しろたまり」は違うしょうゆですか?

白醤油は約200年ほどの歴史があり、現在、発祥の町碧南市内で3軒、全国でも恐らく10軒ほどが生産をしていますが、

しろたまりは弊社日東醸造だけになります。

最大の違いは、しろたまりは醤油ではないこと。小麦麹100%で大豆不使用のため、現行法上は醤油に該当しません。
白醤油は麹原料として90%前後の小麦と10%前後の大豆を使用して、JAS法上の醤油定義に該当していますが、

大豆をゼロにすると醤油定義から外れてしまいます。

日東醸造ではあえて大豆を使用せず定義から外れても、うすい色と、小麦の旨味と甘味を両立させたしろたまりを、

小麦醸造調味料として生産しています。

 

Q:「足助仕込み 三河しろたまり」についてお伺いしたいです。

白醤油に使う小麦や大豆はほぼ全量がアメリカ産だったのですが、しろたまりは国産に限定します。

物量が多く入手しやすかった北海道産からスタートし、その後、愛知経済連さんの協力で愛知県産に切り替えました。

それと塩。
白醤油の塩は工場で作る精製塩ですが、しろたまりには苦汁をしっかり含んだ本来の塩田製法の塩として、

伊豆大島産の海の精を使います。

もうひとつ、仕込水。
碧南本社の白醤油仕込蔵では水道水で仕込みをしています、それが保健所の指導だからです。

美味しく安全な井戸水を求めて奥三河山間部に入り廃校になっていた足助町立大多賀小学校舎で素晴らしい水にたどり着きました。
足助保健所を半年がかりで口説き落として、平成10年に日東醸造足助仕込蔵を開設、翌年から足助仕込三河しろたまりを販売。

Q:しろたまりの製法をぜひ知りたいです。

まずは原料小麦の精麦から、表面を約8%ほど削ります。そうすることで製麹行程で麹菌が入りやすくなりますが、

削り過ぎると小麦のタンパク質が減り、出来上がりの醤油の旨味に影響します。

その後小麦を洗ってから蒸して、麹菌(白醬油用の種麹)をつけ40数時間かけて麹にします。

ここまでは碧南で行い、出来上がったら大急ぎで足助仕込蔵へと運びます。

足助仕込蔵では美味しい井戸水に海の精の塩を溶かしておき、持ってきた麹とともに木桶に仕込みます。

桶の大きさは約3,600Lで、蔵には20本あります。ここで約4か月間、まったくかき混ぜずに静かに熟成発酵させます。

それから引分け、生引(きびき)といって搾らずに重力だけで桶の底からしろたまりをひきます。

そのまま碧南本社へ持ち帰り、火入(加熱殺菌)はしないで濾過のみとし、

充填後の発酵を抑えるため少量の米焼酎を加えてから瓶詰めします。

Q:しろたまりは、どのようなお料理に合いますか?

最大の特徴はやはり料理に色をつけないこと、例えば茶碗蒸や卵焼きなどの使うと綺麗な卵色がそのまま出せますし、

季節の野菜の煮物も緑や赤の色合いが美しくなります。

さらにはしろたまりの特徴で、組み合わせた相手の風味を活かすこと。

だしを合わせればだしの風味を損なわず、素材の持つほのかな味わいも感じることができる味付けが可能です。

他の醤油のように強い醤油味がないので、相手方の邪魔をしません。

フレンチやイタリアンでも使われていて、ジャパニーズテイストを少し出したくても醤油を入れると出過ぎてしまうが、

しろたまりはその加減がちょうどいいと言われます。 使い方の最大のポイントは、入れ過ぎないこと。 

Q:その他のいろいろな貴社商品をご紹介いただけますか?

おススメは、三河白だし、精進白だし、琥珀しろたまり、卵焼きのもと、唐揚げのもとです。

よろしければ、オンラインショッピング こちら をご覧ください。

 

    

 

Q:これからの地域の食文化についてお伺いしたいです。

全国各地の様々なローカル醸造品は、その地域の独特な食文化と密接につながっていると思います。

気候風土や特産の食材、独特の調理法などとつながっているのではないでしょうか。

私たちの誇るべき、豆味噌・たまり醤油・白醤油の味噌醤油はまさにこの地域の味をつくってきましたし、

江戸時代に始まった知多の粕酢は、江戸の街で握りずし文化隆盛に貢献しました。

また、カストリ焼酎から始まった三河みりんは今もその名を全国に知られています。

ただ、地方の生産者は規模が小さく、効率化されていく現代社会構造の変化になじめなかったり、

どんどん厳しくなる衛生に関するルールにも資金的に対応が大変だったり、さらには後継者問題もあり、

様々な理由でその存続が危ぶまれています。

消費者の皆さんに、地元の伝統的な醸造品の良さをお伝えし、価格以外の価値観を感じ取っていただけるようにしていくことが、

我々生産者に必要なことだと思っています。

もし日本中の味噌や醤油が同じような味になってしまったら、地方の食文化は消えてしまうのではないでしょうか。

そんな日本になってしまったら、きっとつまらないですよ。

 

蜷川社長、ご多忙のところ、とても貴重なお話をありがとうございました。

 

現在、「足助仕込み 三河しろたまり」は、海外に進出し、世界各地でも好評です!

我が家では、素材の色や、味の風味を活かす調味料として、「しろたまり」を和食、洋食、中華料理にも活用しております。

素材に奥ゆかしく寄り添い、料理をキリっとしめるときはしめる。このカッコよさにいつも魅了されております。

皆様も、素材を彩やかに美味しくには「しろたまり」を!

 

地元醸造文化を愛し妥協なし! 「しろたまり」と「蜷川社長」敬意をこめまして、ご紹介いたしました。

 

「地域フカボリ再発見」今回は、

 わが地域のタカラモノ 日東醸造株式会社「足助仕込み 三河しろたまり」でございました。